ベートーヴェン、そしてバッハ、モーツァルト

今年はベートーヴェン生誕250年。中途半端と言わないでやって欲しい。元々極端に市場の小さなクラシック業界。「生誕」なり「没後」なりを巻頭に付けた催しで何とか商業ベースに乗せられるのはベートーヴェンか、他にモーツァルトが浮かぶくらい。

 

勿論、私とてすべてのベートーヴェン作品を聴いた訳でもないし、第一そんなことは不可能だ。(聴いたとしても演奏如何でその曲に対する印象が180度変わることもある。)以下の話は、それを前提に聞いて欲しい。

 

先ず、皆が音楽の授業で習ったようなクラシック音楽史上、最高最大の作曲家と思うか。そうは思わない。少なくとも上にバッハとモーツァルトがいる。

 

モーツァルトの音楽は何と言っても複雑かつ多面的だ。笑顔なのに泣いている。たったひとつのフレーズで春の盛りから真冬に突き落とされるような、あの凄みはベートーヴェンの音楽にはないものだ。もっともモーツァルトは「人間をからかう為に神が遣わした天使(悪魔だったかもしれない)」だから最も人間臭い作曲家、ベートーヴェンはどの道、勝てっこないのだが。

 

バッハはどうか。正直バッハのことは良くは知らない。ただ、バッハの音楽は知り得る限りの、どの一曲を取っても「頂点を極めてしまった者の哀しみ、孤独」が痛切に胸を掻きむしる。そんな感情をベートーヴェンの曲に感じたことはない。

 

誰かが既に言っているかもしれないがベートーヴェンはポピュラー音楽に於けるビートルズのような存在かも知れない。世界中で一番知られているし、多分レコードも一番売れている。その点ではバッハもモーツァルトも他の作曲家も遂に及ばなかったのではあるまいか。

 

後進への影響も見逃せない。ベートーヴェン以降の作曲家で彼の影響を受けなかった者などいるだろうか。少なくとも私は思い浮かばない。

 

何より私がクラシック音楽をここまで好きになるきっかけを与えてくれたのは前にも触れた、ブルーノ・ワルター指揮の田園交響曲であった。やはりベートーヴェンにはどれだけ感謝しても、し過ぎることはない。