恋愛について3

今回の話はマジである。書くか、書くまいか迷ったほどマジである。だが、備忘のため記しておく。(忘れる訳ないのだが。)

 

お相手は松下電器に入って最初に配属された事業部の売店の女の子。どうも社会人一年目から私は仕事より休憩が好きだったようで、気の合う先輩のIさんと午前、午後と毎日のように売店に日参し、10分くらいお茶やコーヒーを飲みながら売店の女の子と馬鹿話をするのが日課であった。

 

女性と話すことすら苦手な私が何故話すことができたかと言うと、Iさんが非常にひょうきんで話上手だったこと。そして売店には女性が3人いて、我々が主に話をしていたのは一番年長のおばちゃんだったこと(40歳は過ぎていたと思う)。さすがの私もおばちゃんとの会話は緊張しない。というかむしろ得意。

 

おばちゃん以外には若い女の子がふたり。もちろん話の流れでその子達とも話をすることはあった。Iさんや、おばちゃんのおかげでリラックスして話が出来ていた。

 

売店通いが1年以上続いたある日、女の子の一人が「旅行に行って来たのでおみやげ。」と小さな紙袋をくれた。

 

職場に戻って袋を開けると可愛いお坊さんの人形で、商品の説明書きに「あなたの願い事を書いてお人形さんの中に入れましょう」と書かれていた。人形を見ると底にビニルの蓋があった。蓋を開けると、果たして小さな巻紙が出てきて、広げて見ると・・・

 

ひとこと「大好き!!」と書かれていた。

 

高校生の時の失敗は前に書いた。では、この時はどうすればよかったのだろう。

私はIさんに相談した。Iさんはふたりを終業後、職場近くの喫茶店に招んでくれた。

Iさんと私が喫茶店に着くと、すでにその子は待っていた。

 

驚いたのは、その子の変貌ぶり。たった数時間前までの明るく快活ないつもの調子がすっかり影を潜め、俯いたまま、顔を上げようともしない。Iさんが「君、(私)のことが好きなんか?」と聞くと俯いたまま、頷き、「もし、(私)さんが手紙のことに気付かなかったら、諦めようと思っていた。」と蚊の鳴くような小さな声で答えた。

 

誠に申し訳ない。その後の細かいことがどうしても思い出せない。はっきり言えるのは、結局一回のデートもしなかったことと、私がほどなく転勤になり後腐れのない別れになったこと。何かの伝票で私の転勤先を知った彼女から手紙を受け取ったことがあり、「久し振りに(私)さんのお名前を見つけて懐かしく思いました。お元気ですか?」などと書かれていた。

 

残念ながら、この手紙は捨ててしまったのかどうしても見つからない。しかし、上述の「大好き!!」の手紙は人形ともども大事に保管している。捨てずに持っていることは妻も公認だ。妻の心に広さに感謝すべきか、どうせ、それだけだろうと見透かされていることを恥じ入るべきか・・・。