先見の明

ガラパゴス現象」という言葉をご存じだろうか。

 

主に電化製品などで日本だけでの独自の進化を遂げたさまが、まるでガラパゴス諸島の動物のようであることから名付けられた。

 

例えば何十種類もの銘柄を炊き分ける炊飯器、生地に優しいことを売りにした洗濯機、

ひたすら高画質を追求したテレビなど。

 

日本人には有難いと思えるこれらの機能が海外では必要とされない。洗濯機なら少々生地が傷んでもいいから、とにかく汚れを落とすことと、何より低価格が求められる。この判断を見誤った結果、日本の電機メーカーは韓国や中国メーカーとの競争に敗れ、次々と市場を失っていくことになった。

 

私の投稿が「エアコン流通人」という業界誌に載ったのは20年近く前のことだ。当時すでに省エネや高機能にこだわった結果(人にやさしい風なんて言葉もあった)、価格が跳ね上がりエアコン本来の”冷やす”という機能がおなざりになっている実態を指摘した。「ガラパゴス現象」という言葉が誕生するはるか以前のことだ。

 

ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが唱えて有名になった「Mottainai(もったいない)」も35年以上前、これに類義する英語がないことに気付いていた。なぜ覚えているかと言うと当時、派遣されていた研修機関で他企業の研修仲間(TOEICが800~900点の英語の猛者)にそのことを話すと、「いや、そんなことないよ。例えば、

Too goodとかDo not wasteなど。」と応じてきたので、「君の言う”もったいない”は、

あの奥さんはお前にはもったいない。」(うちの奥さん、貴女のことですよ!聞いてますか?)というような意味だし、「”無駄遣いするな”と”もったいない”も微妙にニュアンスが違う。何より日本語はひとつの単語で完結しているのに、英語では文章で表現しないといけない、これは日常生活の文化になじみがあるかないかの差だ。」と指摘すると、それ以上反論してくることはなかった。

 

話は変わるが音楽の都、ウイーン(ドイツ語)には「musizieren(ムジツィーレン)  音楽すること」という単語がある。おそらく他国の言葉にはないと思う。

 

エアコンの件も、もったいないの件も、他の誰かが気付いていたかもしれない。いや気付いていただろう。でも紛れもなく私もその一員だということは記憶に留めて欲しい。