大予言

訃報欄に懐かしい名前を発見した。五島勉さん。90歳。6月に亡くなられていたようだが新聞掲載が今日だった。

 

五島勉さんと言えば「ノストラダムスの大予言」。この本が発売されたのが1973年だから私は中学生だったが、私の周りで持っていない人は居なかったのではないか。

 

本のおおまかな内容は今でも覚えている。最初にノストラダムスの生涯の紹介があり、次に過去の予言例や、有名人が的中ぶりに驚愕したエピソードなどが語られる。終わりの章にこれから先の予言が語られ、有名な「1999年7の月にアンゴルモアの大王が降りてきて地球を征服する」という結論に結び付いていく。

 

当時の大人がこの本をどう感じていたか分からない。しかし、大人向けの雑誌でもちょくちょく取り上げられていたことは確かだし、ましてや我々世代は大半は本当に地球が滅亡するのだと信じていたのではなかろうか。東日本大震災後、次に大地震が来るのはここだ!などの記事が雑誌の紙面を賑わせた時期があったが、当時の我々はもっと信憑性の高いものとして大予言を捉えていた。

 

ここまで信用した背景には1999年というのが遙かに先の年に思えた(26年先とは今まで生きてきた年数のほぼ倍に相当した)こと、及びどうせ40歳かそこらで死ぬのなら頑張っていい仕事に就く必要もないではないか、という自分に都合の良い言い訳が出来ること。の2つであった。

 

五島勉さんも偉い。半年先、一年先の予言なら多くの人が覚えていて、もし当たらなかったら当然批判、責任追及の手が伸びたことだろうが26年も経てば誰も覚えていないし、思い出しても「あの頃の自分は無邪気だった。」との懐かしい感傷に浸ることができる。つまり誰も不快な思いをしない。実際、1999年当時五島さんにインタビューでもあったのだろうか。

 

私にとっての1999年は何と言っても年明け早々にジャイアント馬場さんが亡くなり、茫然自失。休みの日の夕方のニュースで第一報を聞いた時は全身の力が抜け、崩れ落ちそうになった。大袈裟でなく。同じ8月には長男が生まれ、馬場さんの名前を頂戴した。という訳で知らぬ間に7の月が過ぎ去っていたのだろう。

 

それにしてもこの頃の少年は今と違って雑多な情報、伝言に毒されていない分、純粋で鋭敏な感受性を持っていたように思う。

 

それには五島勉さんや梶原一騎さんのような若者に夢やロマンを感じさせてくれたことも大きい。

 

この項、続く。