当たらないことを願う

リッカーミシンという会社をご存知か。阪神タイガース中西清起選手も在籍していた名門企業だったが20年以上前経営不振で倒産した。

 

このリッカーミシンが倒産した時のドキュメント小説を読んだことがあるが淡々とした筆致が却って不気味で忘れられない。記憶のままに再録する。

 

それは会社に掛かってきた一本の電話で始まった。営業部の田中(仮名)が受話器を取るといきなり相手が叫んだ。

「お前とこの会社潰れたってほんまか!」

「嫌だなあ。冗談はやめて下さいよ。」

「冗談なんか言うか!今テレビでリッカーミシン倒産て出てるやないか!」

はっとした田中がフロアに1台だけあるテレビを付けるとニュース速報のテロップが出ている。そう言えばさっきから部長が席に居ない…。

 

こんな感じだったと思う。

 

何故このようなエピソードを思い出したかと言うと昨日の菅首相の2回目となる緊急事態宣言が出て以降、テレビに出ているコメンテーター、特に医療関係者の話具合の切迫度が明らかに変わって来たからだ。

 

今までは医療崩壊は起きることはあるか?起きるとすればどんな条件下でいつ頃かという話し方だったのに、もう既に崩壊している、(緊急事態宣言は)手遅れだったと言う人まで現れた。

 

これをどう見るべきか。私は多少は政府に遠慮していた医療関係者も昨日の宣言を受けて正直なことを話し始めたのではないかと感じている。

 

リッカーミシンもある日突然倒産するまで、会社がそんなに危ないとは誰も感じていなかった。突然のニュース速報と首相の緊急事態宣言を同一視するのは心配し過ぎだろうか。

 

私は直感力には少しばかり自信がある。しかし、今回ばかりは私の直感が空振りに終わることを願わずにはいられない。