恩義ある会社

投資というものを始めて何十年にもなる。最初は松下電器での持株会。まあ、これは投資というより積立に近い感覚で何も考えずにやっていた。

 

投資の成果について書くのはあまりお上品ではないので触れないが、こと株に関してはかなり運がない。株はどれだけ上がろうと下がろうと売るまでは損得は確定しないが例外が倒産。株が文字通り「紙切れ」になる。昨年保有していた大手衣料メーカーが倒産し、持っていた株が全額そのまま紙くずと化した。そして今、額は多くないが株を保有しているオンキヨー上場廃止の危機に直面している。

 

株主なら普通はこんな事態に陥った会社に多少は立腹しても良さそうなものだが、ことオンキヨーに関する限り余り腹が立たない。というよりむしろ今日までよく頑張ってくれたと感無量な思いになる。同じオーディオ専業メーカーだったトリオ、サンスイナカミチなどはとっくに破産、廃業しているというのに。

 

前にも触れたがオンキヨーは大学4年の就職活動時期にもっとも早く、夏季休暇中に内定をくれた会社。ここで内定をもらっていたからこそ、本命の松下電器の試験にもリラックスして臨むことが出来た。もし、どこからの内定もなしに本番を迎えていたら「絶対に失敗出来ない」との焦りから思わぬ失敗を冒していたかも知れない。

 

大学入試も同様だ。私の場合、関西私大の雄、いわゆる関関同立に受かっていたので本命の国立大学にもそれ程緊張することなく受験することが出来た。もっとも試験前日も相撲のテレビ中継をかぶりつきで見ていた位だから緊張していたか不明だが。

 

時代(周囲)ものんびりしていたのだろうが、その中でも特に私はのんびりしていた。考えれば大学選びにせよ、就職にせよ一生を左右する一大事なのに、ひとつ受かればもういいや、と他の可能性を探ることは一切しなかった。今、何十社受けて全部落とされたなんて話を聞くと本当に可哀想だし、私ならどうなっていただろうと想像するだけで恐ろしくなる。

 

その恩義ある会社が今、上場廃止の危機に陥っている。心配はすれど、とても腹を立てる気にはなれないのである。