鑑定は難しい

平山郁夫東山魁夷の偽版画が出回っていたことが分かった。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210207-OYT1T50201

 

偽物がどんな場所で売られていたかにも依るが、この世界は騙す方も悪いが騙される方も悪いという世界。今、美術品の鑑定を生業にしている人も何回も偽物を掴まされ、痛い目に遭った経験のない人はいない。

 

記事によると、これらの偽物は数十〜数百万円で売買されていたとののとだが、ピカソゴッホとなると数十〜数百億円の世界。全くスケールが違ってくる。

 

以前、BSのドキュメンタリー番組で見たのだが、海外では画商、画家、鑑定家三者全員力を合わせての偽物事件があったという。一生充分食べていけるだけのお金が入るとなれば例え悪魔に魂を売っても心を動かされない者はいないだろう。

 

これも美術品の真贋鑑定がとてつもなく難しいからこそ、起こる事件である。以前から疑問なのだが、なんでも鑑定団で偽物と判断した根拠に「こんな雑な描写はしない」とか「線が弱い」などと言うが彼らとて、やる気のない時、体調の良くない時、それ以上に依頼主が気に入らなければわざと下手に描くこともあろう。果たしてそんな理由で判断できるものだろうか。

 

時効だから言うが私も美術品に関する類似の経験がある。大学生のアルバイトで展覧会の準備に行ったときのこと。そこそこ権威のある展覧会だったらしく画家や評論家らしき人が準備の様子を見に来ていた。

 

私達は会場入口から作品を搬入、所定の場所に置いたり、絵画を壁に掛けたりの作業。大作となると二人がかりで運ぶことになる。

 

そんな中に何を描いたのか、多分海だったと記憶するがその絵が全面海だけで空も島も描かれていないのでどちらか上か下か分からないものがあった。手掛かりは作品の裏に書かれたサイン。それで判別は出来たのだが生憎持った時の上下が反対だった。一人で持てるような小さな絵画なら持ち替えもしようが相手もあること、エイやとばかりに上下反対のまま壁に掛けた。

 

全ての搬入が終わりバイト代金をもらう列に並ぶ時、それとなく例の絵画を見に行ったが相変わらず上下反対のまま壁に掛かっていた。画家や評論家の先生方も気付かなかったらしい。

 

当の作者は本番の展覧会に来たのだろうか。もし、来ていたら何か言っただろうか。思い出しても肝が冷える。