個人情報

1980年に発刊された「日本国宝事典」という本を持っている。巻末に都道府県別の所有者一覧のページがあるのだが、寺社や美術館だけではなく、個人所有の国宝についても所有者の個人名、住所、更に電話番号まで記載されている。

 

当時の情報だが、和歌山県にも個人所有の国宝(刀剣)が1件あり住所も名前も載っている。偶々母親の実家の近所の家で、聞いた話だが戦後食べるものに困った人が訪ねてきて幾許かの米や芋と交換したものらしい。その人も今持っていれば何千万?しかし誰もが餓えていた大変な時代、勿体ないことをしたなどと責めることは誰も出来ない。

 

この本に限らず、その頃の書籍の読者コーナーには名前や住所が当たり前のように載っていた。私は見た覚えはないが芸能人やスポーツ選手の自宅住所やご丁寧にも路線案内も普通に載っていたらしい。

 

私もそのコーナーでオーディオ製品の売買をしたり、アイドルの生写真を交換したこともある。特に私が印象深く覚えているのは姉が購読していた雑誌の読者コーナーに「ジョンレノンの髪の毛を売ります」という記事があったことだ。投稿者は東京の美容店、値段は1本3-4000円だったと記憶する。お忍びで日本によく来ていたというからそんな出品があっても不思議ではない。

 

買った人はいたのだろうか。ちゃんとした証明があれば今なら恐ろしい値段が付くだろうが、何か証明はあったのだろうか。まさか本人にサインして貰う訳にもゆくまいし。

 

今、書店で普通に買える本に個人情報が載ることなど想像もできないが、何につけ互いが互いを信じあえる良き時代だったのだろう。