二十歳の頃、親の知り合いのベテラン警察官に言われた。
「○君(私のこと)は絶対に悪い事の出来ない顔をしてるなあ。」
普通に考えればほめ言葉だろう。
「如何にも悪い事をやりそうな顔をしてるなあ。」と言われた訳ではない。
なのに素直に喜べないのである。悪い事もしない代わりに大きな事も出来ないだろう、そう言われているような気がした。この気持ち、女性は分かるだろうか。反論した。
「分かりませんよ。捕まってみたらあの大人しい人がとか、あの真面目な人がというニュースをよく聞くじゃないですか。」
「いや〜、絶対に出来ん。」そう断言されて私も苦笑いするしかなかった…。
先日NHKで首題のタイトルの番組が放送された。
https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/W66PX86949/
番組の内容は上記ページを参照願いたいが、このような気持ちを抱くことは誰でもあるのではないだろうか。特にこの年齢になると。
「妻にとって私はベストパートナーだつたのだろうか?」
「妻は他にも好きな人がいたのではないだろうか?」
逆もまた真なり。
「妻は私にとってベストパートナーだったのだろうか?」
「私は他にも好きな人がいたのではないだろうか?」
前者の質問は分からないとしか言いようがない。極端に言えば世界中のカップルがそうだろう。では後者の質問は?自分のことなのに分からない、はおかしい。勿論好きな人はいた。でも私の「好きだった」はちょっと他の人とは違うような気がする。
私が好きだった人とはクラスで誰が可愛いと思う?といった男友達同士の会話の中だけでの「好き」。告白したり、ましてや、デートしたりといった何のアクションも伴っていない頭の中だけのものだ。
私には今でも会う機会のある同期の友人が何人か居るが彼等は皆自分の力で配偶者を探している。私と同じく学生時代は女っ気ゼロだった筈なのに、いつどこでそんなテクニックを身に付けたのか。
見合い結婚が悪いとは言わない。妻だって見合い結婚だ(当たり前か)。でも私は合コンはおろか、男女のグループで何かしたという経験もない。
還暦を過ぎ、一回しかない人生を想う時、何をやり残したか。コロナ云々とは関係なく、元々海外旅行に興味はない。国内の旅行も道中でワイワイするのが楽しいのであつて特に何処に行きたいとかはない。勉強や仕事は他人の半分もやっていないだろうが元々大嫌いだ。なんの未練もない。
正直に言う。人生80年を24時間に例えると既に夕方の6時を過ぎた今、唯一最大のやり残した事、今でもそれを思うと胸が狂しくなるのは思春期の恋愛、正にそれに尽きる。
親の知り合いの警察官が言うように残りの人生も私は悪い事はしないだろう。でも警察官の言う「悪い事」は刑事法上での悪い事で、民事法上、また道徳上の悪い事もしないと誰が言い切れよう。
って、出来ないんだろうなぁ。