大晦日

紅白歌合戦の冒頭何曲かだけ聞いて「こりゃかなわん」と、抜け出してきた。曲どころか歌手も知らないのだから見ていて何も面白くない。今年は演歌組のリストラを大断行し、若者には好評らしいがリストラから逃れた数少ない演歌組もけして嬉しくは思っていまい。ドラマもそうだが人気が先行し、実力が伴っていない連中と同じステージに立つのは苦痛以外の何物でもない。

 

紅白だけではない、年越しの正にその瞬間に起きていること自体が無くなった。一番最近では年またぎ酒場放浪記が和歌山に来た数年前はさすがに生で見ていたがその前後はずっと眠りの中で新年を迎えている。大晦日は家族揃ってレコード大賞紅白歌合戦ゆく年くる年という家庭はタイムマシンの中だけの出来事になってしまったのだろうか。

 

 

「歳を取るほどに年月の流れは加速する」というがその理由のひとつとして今まで生きてきた人生の中での比重が軽くなっていくことが挙げられると思う。5歳の子供にとっての1年は人生の20%を占めるが、50歳ともなると2%、今の私の歳だと1.6%に過ぎない。それと決定的なのは年をとるにつれ、色々なことを経験する上に、更に心の柔軟性が失われ滅多なことには驚いたり感動することが無くなることだ。

 

東北旅行で見た中尊寺の紅葉はものの見事だったが「ああ綺麗だな」で終わり。25歳の時アメリカでビールの値段が銘柄に依って異なるのを見たり、新品の書籍が値引きされているのを見ただけで世紀の大発見のような感動を覚えた、あの感性はどこに行ってしまったのだろう。

 

それに誠に寂しい話だか自分自身が主体となるような出来事が年とともに無くなっていることも事実だ。今年のビッグニュースは?と聞かれても息子が就職しました、3人目の孫ができました、と全ては子供や孫の世代の出来事。自身が絡むようなニュースはない。

 

今年を冷静に振り返ってもバツと思い浮かぶのは私事では思い切って16万円のCDプレーヤーを買ったことくらい。世間一般のニュースではアントニオ猪木さんの訃報、知り合い関係ではM君のガン発覚くらいしか思い浮かばない。(彼のガンについては全く再発の心配はないとのことで本当に良かった。)

 

あと、今年も暑かった!もう冷夏という言葉は死語になったのだろうか。台風や雨の強さも明らかに昔とは桁が違って来ている。この調子で今後も暑くなり、気象は凶暴になっていくのだろうか。今年産まれた孫、社会人デビューした息子、若い人には言葉では言い尽くせない羨ましさを感じるがこれからまだ何十年もこんな過酷な環境で生きて行かねばならないのかと思うと幾分かの憐れみも感じてしまう。

 

まあ、コロナにもならず、交通事故にも遭わず、何よりこれといった身体の不調はない。これ以上の贅沢はあろうか。どうか来年も今年同様つつがない1年でありますように。