松下電器を退職した後、失業保険をもらうためにハローワークを訪れた。私の履歴書を見た担当者は開口一番「素晴らしい経歴ですね〜。」と感嘆しきり。そして、こう付け加えた。「今、和歌山大学から入社するのは実質不可能ですからね。」・・・分かりやすく言えば相手にされていない(門前払い)ということだ。私の頃は和歌山大学だけのための会社説明会を天王寺で開催してくれた位ほどなのに。
今はだいぶ様相が変わっているだろうが私が入った頃の松下電器といえば大卒人気企業ランキングで理系は2、3位。文系でも5、6位に入っていたと記憶する。だから松下電器といえば大卒エリートの集団、目から鼻に抜けるような秀才揃いの会社だと思っていたが実際入ってみるとかなり想像とは違っていた。
研修を終えて最初に配属されたのはステレオ事業部営業部、40人くらいの部署だったが大卒は10人くらい。その年の年末に和歌山大学卒業生だけの松下グループ忘年会があった。今思えば結構なお偉いさんも居たのだろうが、そこは一年生の怖いもの知らず、「なんで松下を選んだのですか?」という今書いていても恥ずかしくなるような青臭い質問をした。この質問に何人かの先輩の「来てくれ、来てくれとしつこいので入ってやったんや。」という返答が記憶に残っている。当時の松下は大卒社員を掻き集めるのに必死だったのだろう。エリートの多くはメーカーではなく銀行や商社を希望したからだ。言い方は悪いが当時の松下は中卒、高卒の叩き上げと落ちこぼれ大卒生の寄せ集めだったとも言えないこともない。
でも肝心なのは、では当時のけして優秀とは言えない経歴の社員が集まっていた当時の松下と並みの国立大では門前払いの今の松下。どちらが強く逞しい会社か、ということだ。答えは言うまでもあるまい。
毎年元旦恒例のウイーンフィル、ニューイヤーコンサートに帝王カラヤンが登場したのは後にも先にも1987年一回だ。
と、ここで紙数も尽きた。次回へ続く。