当時を知っているという強み

15日に2度目の手術を終えた友人が電話をくれた。ずっと絶飲絶食で昨日から水を飲めたらしい。今度は直腸と肛門を繋ぐ手術で時間そのものは前回より格段に短かったが痛みは今回の方がむしろ強いという。

 

私はまだ手術の経験はないので、彼の話を聞いてただただ恐れおののくのみ、こればかりはどれだけ本を読んだり話を聞いても実際に経験した人の万分の一も分かりはしない。

 

あるがん専門医は新しい抗がん剤が出る度「今度の新しい抗がん剤は副作用も少ないので大変楽ですよ。」と患者に話していたのだがその彼が実際がんになってその抗がん剤を服用すると副作用が死ぬほど過酷でよくあんなことを患者に言っていたものだと身を持って知ったという。「百聞は一見にしかず」というが「百見は一経験にしかず」と言い換える必要があるだろう。

 

 

未だに新しいファンが増え続けるビートルズだがどんな若い愛好家にも負けないものがひとつある。それはほんの少しだが彼らの現役時代を知っていること、同じ空気を吸ったという実感、経験があることだ。来日時の記者会見でリンゴ・スターが何か望みがあるかとの質問に「他のメンバーと同じくらいの身長になりたい。」と答え、会場が笑いの渦に包まれたというエピソードは当時購読していた漫画雑誌(確か少年サンデー)で読んだのでよく覚えている。

 

私が尊敬する人はチャップリン双葉山ジャイアント馬場であることは何回も述べた。

 

この3人に順位を付けることなど到底出来ないが関わり方はそれぞれ異なる。

 

馬場さんは日本プロレスの全盛時から現役のまま突然亡くなるまでの半生の殆ど全てを見ることが出来た。一方、双葉山に関しては生前の記憶が何もない。現役時代は戦前戦中なので元より知る由もないが理事長のまま亡くなったのが1968年だから千秋楽の賜杯授与式などで相撲好きの祖父などと見ている筈だが何分私がその頃相撲に興味がなかった。

 

さてチャップリンは、と言うとビートルズと同じく晩年の僅かの期間だが、チャップリン生前中に彼のリバイバル上映(ビバ!チャップリン)が始まり彼の主要作全部を見ることが出来たこと、上映第一作となった「モダンタイムス」のパンフレットにチャップリンから日本のファンに宛てたメッセージが添えられていることをリアルタイムで見ることが出来たことは私の大きな喜びのひとつである。

 

彼が亡くなった年(1977年)の紅白歌合戦には白組応援団長の三波伸介さんがチャップリンに扮して登場したこと、それに対して紅組応援団長の中村メイコさんが「チャップリンが亡くなったのは88歳だけど貴方は88キロね。」とツッコミを入れ三波さんがずっこけたこともよく覚えている。

 

 

日本チャップリン協会会長の大野裕之氏の近著「ビジネスと人生に効く教養としてのチャップリン」を読んだ。

 

彼の本は何冊が読んでいるが今回の本は新しく知ることも多く大変興味深く読むことができた。マイケル・ジャクソンチャップリンの熱烈な信奉者でムーンウォークはモダンタイムスのこのシーンに大きな影響を受けていることもこの本で初めて知った。1:30辺り

https://youtu.be/N83xbDDdNgw

 

チャップリンを始め上に挙げた3人に関する知恵比べなら100人中99人に勝つ自信があるがさすがに大野さんの足元にも及ぶまい、そのことは明らかだがただひとつ、チャップリンの生前のことを知っている、そのことだけは大野さん(1974年生まれ)に勝っている、と言ってもよろしいでしょうか?