家事の分担

水木しげるさんの述懐だったと思うが確信はない。戦地での兵隊の会話。

「あいつ、うまいことやりやがって。」

「何があったんだ?」

「あいつこの前の爆撃で右腕が吹っ飛んだだがそのおかげで最前線に行かなくてもよい事になったらしい。」

片腕が無くなるなんて、一人の人間にとって想像もつかない悲劇だがそんなことですら羨ましがられる要素になってしまう。如何に戦争というものが人間の精神を破壊してしまうものか。

 

仔細には触れないが私の持病が特定疾患に含まれているのでコロナワクチンの優先接種を受けられることになりそうだ。程度は全然違うが上記の片腕を無くした兵隊に自身が重なる。複雑な心境。

 

前項のテレビCM「私作る人、僕食べる人」は大きな議論を呼んだ。新聞の投書欄でも賛成、反対の意見が飛び交った。この投書欄での読者同士の討論、私の思い出に残っているものが他にふたつある。ひとつは電車でお年寄りに席を譲るべきかというテーマ。最初はお年寄りからの投書だったと思う。満員電車に乗ったが誰も席を譲ってくれなかった。それに対して譲るべき、優先席なら譲るべき、若者だって疲れているなどの意見が寄せられた。最後は「席は譲る為にあるのではない」といった意見が載ったと記憶する。

 

もうひとつは何を隠そう、私が巻き込まれたので嫌が応にも記憶に鮮明だ。何年か前、某出版社社長が「図書館は文庫本の貸し出しを止めて欲しい。文庫本くらいは自分で買って欲しい。」と訴えた。至極真っ当な意見のように思えた。処が当時の産経新聞が投書欄に「耳疑う出版社社長の意見」と題して反論の高齢女性意見を載せた。年金だけが頼りの高齢者には図書館の本だけが楽しみ。私の一番嫌いな言い草だ。前に酒に金が掛かるので本に廻すお金がないと書いたがあれはあくまでユーモア。公の場ではけして言わない。

 

早速反論を書き、幸い掲載された。今回の社長の意見は充分納得できる。パソコンの普及や若者の活字離れなどでそれでなくても苦しい出版界。このままでは未来の担い手までが育たなくなる。

 

驚いたことに再度の社長への反論意見が載った。今度は若い女性だった。文庫本を貸しているから出版社の業績が落ちているというデータはない。勿論再度反論を書いた。今の図書館は本ばかりかCDやDVDも貸すようになった。もし、将来公共機関に喪服を貸せ、大工道具を貸せと要求がエスカレートしていけば日本の産業全体が保たなくなる。今回は掲載されなかった、と思ったら再度反論意見が載った。腹が立ったので内容は覚えていない。

 

産経新聞の投書欄事務局に意見を送った。別に私の投書を載せなくてもよいが順番がおかしいのではないかと。無視されると思ったが返答が来た。それだけは感心だ。「○さんのお気持ちを害する結果になり恐縮です。当欄は読者の意見を公平に載せています。」概ねそんな内容だった。文庫本も買いたくない、自称貧乏がうるさく騒ぎ、前から文庫本くらい自分で買っている方々は沈黙していたのだろう。

 

付け加えておくが年金は老後の生活の足しとして支給されるものであって、これで生活費全てを賄えるなんてことは国は今まで言ったことはないからな。覚えておけよ。

 

あっ、又字数が満ちた。次回へ。