自分にも言えない秘密

「人間には自分にも言えない秘密がある。」誰の言葉か忘れたが、好きな言葉のひとつである。(一番好きな言葉はゲーテの「人生はすべて次の二つから成り立っている。したいけれどできない。できるけれどしたくない。」)

 

我々世代は子供の頃、主に祖母(明治生まれ)から今で言う怪談、奇談や含蓄ある話の数々を聞いて育った方が多いのではなかろうか。そんな中で聞いた話のひとつに人間は死んだら閻魔大王様の前に連れて来られ、生前の行いによって天国(極楽)に行くか地獄に行くか決められる、というのがあった。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだがこの年齢になっても本当にそんなことがあるかも?と信じている自分がいる。(と言うより死=完全消滅(肉体も魂も残らない)の方がより恐ろしいので例え地獄でも自身の存在が残っていて欲しいという逃げの心理が働いているのかもしれない。)

 

そして死後、閻魔様の前に連れて来られた時、生前の悪行として晒されること、それがまさしく「自分にも言えない秘密」ではなかろうか。

 

私は基本的に平和主義で弱い者いじめや差別的な言動に与したことはない。飲食店などでたまに見かける店員に偉そうな口を利く人間など一番嫌いなタイプだ。だが、自身の半生を振り返ると小学生時代にたった一度だけ、皆のノリでいじめに加担したことがあり、その時の「君もそちら側の人間になってしまったのか。」という諦めにも似た悲しい目つきは忘れることができない。

 

他の人にも読まれることを覚悟で正直に書けたことで多少は肩の荷が下りた。しかし、これ以外にも無意識な言動で他者を傷付けることはこれまでも、これからもきっとあるだろう。やはり閻魔様には会いたくない。