忙しい、なんて簡単に言うな

ある人のエッセイを読んでいて、こんな文章に目がとまった。

 

あるページには「映画が大好きなので本当はもっと映画館に行きたいのだが、忙しくてなかなか時間が取れない」と書かれている。一方、他のページには「子供の頃から巨人軍の大ファンで今でも最低月2回は東京ドームに応援に行く」と。

 

何のことはない。この御仁、それほど忙しくないのである。それほど(少なくとも巨人に比べたら)映画が好きではないのである。

 

世間に「忙しい、忙しい」と口癖のように言う人は非常に多いが、そのほとんどがこの著者に似た、忙しい振るのが好きなだけの口先忙し人ではなかろうか。本当に忙しければ「忙しい、忙しい」とぼやく暇もないはずだ。

 

忙しいの”りっしんべん”は心を表す。したがって忙しいとは心を亡くすことだと、ある本で読んだ。そんな謂れを知るずっと前から私は「忙しい」と言う人間のことが嫌いだった。(もっとも何の予定もすることもない誰から見ても暇な人がギャグで「忙しい、忙しい」というのは大好きだが。)

 

「忙しい、忙しい」と言う人間だけではない。こんな人間も嫌いだ。例えば何か(本でも、CDでも)プレゼントされたとする。「有難う。早速読むわ。」と言っておけば何の問題もないものを「時間が空いたら読むわ。」という奴。

 

本やCDだけではない。食べ物をプレゼントされた時に「ちょうど欲しかったので嬉しい。早速今晩食べるわ。」と言われるとこちらも嬉しい。「今日は食べるものがあるので明日食べる。」なんて言われた日にはまさか、腐らされるのではなかろうかと心配になってしまう。

 

「忙しい」も「明日食べるわ」も悪気なく、口癖で言っているのだろう。でも安心して欲しい。誰も、わざわざ貴方の家の食卓のチェックには行きませんよ。だからプレゼントをくれた人を気持ちよくさせてあげましょうよ。