番外(告白)編

 

滋賀県に住んでいた頃の話。休みの日に浜大津の道をドライブしているとドアミラー越しに後ろの車内が見えた。若いカップルが乗っていた。男の方は女性の肩に手を廻すなど見るからにイチャイチャしている。ようやるわ、と思いながら女性の方を見るとなんと同じ部署のSさんではないか!Sさんとは席も近く、よく話をする仲、というより何故か私の妻のファンになってくれ、3回も拙宅にお招きしたことがある。Sさんに彼氏がいるなんて聞いてないぞ~、って別に私に報告する義務はないのだが。まずいものを見てしまった!

 

道路が2車線になり、信号待ちになった時その車が横に並んだ。私は必死に顔をそらせて気付かれないように頑張った。その後も何分か並走したが何とか気付かれに済みホッとして帰路に就いた。

 

翌日、会社でSさんに聞いた。

「昨日浜大津の方へ行ってなかった?」

「いいえ、行ってないです。」

「おかしいなあ、瓜二つの人を見たんやけどなあ。」

「あっ、それ前も言われたことあります!なんかあの辺りに私にそっくりの人がいるみたいですね。」

彼女の言葉に嘘はないように思えた。

 

人はあまりにもそっくりの人を見るとどうなるか。いや、あの時はそっくりさんではなくその人自身に間違いないと思っていたのだが。

 

人間とは不思議なものでその時の状況やどんな会話をしたかは覚えていないのに相手の顔付きや表情は克明に覚えていることがある。私の場合でもかなり前のブログにも書いたが小学生時代に同級生だった少し肢体の不自由な女の子(子供とは残酷なものでこんな子がいじめの対象になる)のいじめにたった一度だけ加担したことがあり、その時の彼女の「貴方だけは(こんなことはしないと)信じていたのに。」と言わんばかりに向けられた悲しげな視線は未だに忘れることが出来ない。

 

これも前のブログに書いたが高校入学当初、私に思いを寄せてくれた女の子、私の不徳の致すところですっぽかしてしまったのだが、翌日教室に入って彼女の方を見た時に私に向けられた「待っていたのに何故来てくれなかったのか。」という怒りのこもった射すくめられるような鋭い視線は未だに記憶に鮮明だ。今思い返しても私如きが学年でも1、2を争う可愛い子ちゃんだった彼女の目に留まったことが信じられず、あれは夢かまぼろしだったのかと思ったりもするのだがあの視線の鋭さの記憶は薄れることが無いのでやはり本当だったのかと改めて思っている次第である。

 

前置きが長くなった。問題は先日新聞に載ったこの広告である。

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宝酒造の広告であること以外何も分からない。この女性が誰なのか、女優なのかモデルなのか、それとも一般人か。

 

この写真を見て驚いた。ある女性とうり二つなのだ。似ているなんてものではない。その衝撃は冒頭に書いた同じ部署の女性(に似た人)を見た時を遥かに上回る。

 

その方は私より2歳下なので今は勿論還暦を過ぎた立派なおばあちゃん(失礼)、しかし私が見知った頃の彼女と写真の女性はあまりに似ている。

 

えっ、それって誰のこと?この質問には何があっても答えられそうにない。墓場に持って行くしかなさそうだ。