内村航平選手

私がハッキリ記憶にあるメキシコオリンピック以降で一番強かった日本選手は間違いなく、モントリオール大会の女子バレーだ。全試合ストレート勝ち。決勝のソ連戦最終セットは確か15:2ではなかったか。エース白井選手のアタックが面白いように決まった。余りの圧勝振りに選手も全くはしゃいでいる様子はなかったように思う。もっとも、この頃の日本選手は全般に勝っても負けてもあまり表情を変えることはなく、外国人には奇異に見えていたらしい。リオ金メダルの柔道、大野選手を思い出してもらえれば近いかも知れない。

 

一番強かったと書いたが、強さという点では柔道にもレスリングにも体操にも強い選手はいた。ミュンヘン大会の男子体操など正に圧巻の強さだった。しかし、格闘技は一瞬の空きを突かれる怖さがある。体操もちょっと着地が乱れたらオールオーバーだ。その点バレーは1点ずつの加点なのでいっぺんに形勢が変わる心配がない。一番強かったではなく、一番安心して見ていられた、が適当かも知れない。

 

体操の内村航平選手がコロナ陽性とのこと。数年前なら日本の体操界に大ダメージだが、今はそうでないことに一抹の寂しさと安心を覚える。

 

イチロー羽生結弦、またボクシングの井上尚弥など世界歴代レベルで見てもトップクラスの日本選手は何人かいる。しかし、その種目で世界中の誰もが口を揃えてナンバーワンと認める選手と言えば内村航平、その人を置いて他に居ない。ロンドン五輪の金メダル予想確率はボルトを上回り、ある現地紙はこう書いた。「内村が金メダルを取る為にしなければならない事が一つだけある。それはロンドンに来る事だ。」前にも書いたがこんなユーモアセンスは残念ながら日本人は苦手だ。個人総合2連覇したリオ五輪のメダリスト会見である選手はこう熱弁した。「ウチムラは体操界のボルトでありフェルプス。我々のアイドルなんです。」コマネチも「ウチムラが体操史上最高の選手であることに疑問はない。」と認めている。

 

こんな凄い選手なのにそれに相応しい評価を受けていないことに腹立たしさを覚える。まあ、国民栄誉賞ごときに収まるレベルの選手ではないが。