悲しい、虚しい

車で聞く音楽を専らカセットに頼っていた時代、女の子とのデートの成否は如何にしてムードに応じた曲目をどんな順番で収めておくか、その腕前に大きく頼っていた。例えば走り始めて何分くらい経てば海が見えてくるので、丁度その頃にサザンの歌が流れるようにしておこうとか、裏では色々苦労していた(らしい)。

 

らしい、と書いたのは幸か不幸か私は一切そのような苦労をする機会がなかったからだ。えっ、要は女の子とデートしたことが無いのだろうって? ほっとけ。

 

そのカーオーディオもCDが主流になったが不思議なことにデートと車内で聞く音楽との関連性が語られることは無くなっていった。聞きたいタイミングに聞きたい曲を流す。カセット時代にあれだけ苦労したことが余りに簡単に出来るようになって却って魅力を失ってしまったのだろう。

 

そのCDも近年のカーオーディオには装備されない事が多くなったらしい。USBやSDカード、またBluetoothで聞くことが一般的になったからだろう。

 

ソニーブルーレイディスクの生産を終了する。市場の縮小による需要減が影響。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240705-OYT1T50119/

 

レコードがCDに、ビデオがDVDに移り変わっていった頃、皆が思った。「テープの時代は終わった。これからはディスクの時代だ。」思えばカセット以降どれだけのメディアが出ては消えたことか。思い出すままに挙げてもエルカセット、MD(ミニディスク)、DAT(デジタルオーディオテープ)。LD(レーザーディスク)、VHDなど。みな今は影も形もない。

 

カセットが本格的に普及した1970年代にラジカセを愛用してきた私にとってカセットが同窓生とすれば上に挙げたメディアは子供、孫のようなもの。中でもブルーレイは音質、画質とも最上のとびきり出来の良い孫のようなものだった。さすがにCD、DVDはすぐに無くなることはなさそうだが若い世代には殆ど使われていないようなので、先行きはけして明るくない。

 

1番の親不孝は親より先に亡くなることだと言うが、慣れ親しんできたメディアが消えていくのはやはり辛く、悲しい。