栃ノ海という生き方2

栃ノ海という名前、当然知っている。と言っても現役時代の記憶はなく、後に学生時代に勉強したから知っていた。彼より前に横綱に昇進していた大鵬柏戸ははっきりと現役時代の記憶があるのだが。栃ノ海の引退が1966年。柏戸の引退が1969年。どうもこの間くらいが私の記憶の境目のようだ。

 

小柄だったから身体の消耗も激しかったのだろうが、大鵬柏戸、特に大鵬という大相撲の歴史上でも屈指の大横綱と同時代というのも運が悪かった。引退後も師匠がこれまた栃若時代の名横綱栃錦でずっと部屋付きのまま。栃錦が亡くなってやっと部屋を継承したが「元横綱で部屋を持っていないのは栃ノ海だけ」と陰口を叩かれる時期が長かった。

 

その栃ノ海さん、亡くなったのは82歳で歴代横綱中最年長だという。因みに師匠の栃錦は64歳没。随分早死にように思えるが力士の中ではけして短命な方ではない。私の尊敬する双葉山は56歳、日本相撲協会理事長在任中のまま亡くなっている。大鵬は72歳と比較的長命だが、36歳の時、脳梗塞に襲われ以降半身に麻痺が残る人生だった。

 

 

現役時代は大鵬という超強力なライバルが居て、引退後も長期間部屋付き。栃ノ海に不遇だった印象が先立ってしまうのは否定できない。

 

大相撲で言えば三役どころか小結にも昇進出来ていない私が言うのも誠におこがましいが、お前は栃ノ海の人生と栃錦大鵬の人生どちらを選ぶと聞かれれば私なら迷うことなく前者を選ぶ。人生無事是名馬の意味を噛み締める栃ノ海さんの訃報であった。