梶原一騎は天才だ

タレント、武井壮さんはどんな猛獣にも勝てる百獣の王として売り出して来た。(その武井さんが会った瞬間、絶対勝てないと身震いしたのが室伏広治さんと言うのも笑える。)

 

我々の世代で動物と戦った格闘家と言って思い出すのは、何と言っても「牛殺しのオーヤマ」こと、空手家の大山倍達である。大山氏について詳しく書くのが本稿の趣意ではないので興味のある方は調べて欲しい。

 

その大山氏、何冊か著書を出しておりその中に動物相手の戦い方の本があった。買ったのか買わなかったのか、とにかく今手元にはないが内容はある程度覚えている。

 

牛ならここを狙うとか、ワニならこう戦うとか正に武井壮さんの先駆けのような内容だったが、私がよく覚えているのは「素手の人間は思いの外弱く、犬や猫でもそう簡単には勝てない」という記述。なるほど、そうだろうと膝を打った。

 

また牛や馬、蛇やワニとの戦い方には色々書いているのにライオンが相手のページには「ライオンに勝てる人間などいません。もし私がライオンと向き合ったら一目散に逃げます。」と書かれていたことも記憶に残っている。

 

ここでもしライオンならこう戦うとか、ここを狙えば勝てるとか書かれていたら本全体が胡散臭いものになっていたのだが、正直に勝てっこないと書いているところ、当時の少年たちへの説得力をより増す結果となっていた。

 

処で大山倍達氏の著書、今では殆ど全てがゴーストライターによるものであったことが明らかになっている。そしてその大部分に関わっていたのが梶原一騎氏であったことも。梶原一騎氏と言えば「巨人の星」や「タイガーマスク」で当時の少年たちを熱中させた張本人だ。

 

彼は子供心を掴む天才だったという所以である。