幸福のスイッチ

映画「幸福のスイッチ」の安田真奈監督のトークショーに行ったのは10年くらい前。よく覚えているのは沢田研二さんのギャラ(1日当たりの拘束料)が圧倒的に高いので先に沢田さんの出演シーンの撮影を全部済ませたというエピソードだ。

 

トークショーの後、映画を見た。和歌山県田辺市にある「ナショナルショップ(松下電器売店)」が舞台の映画だが大変優れた心温まる作品で、一人でも多くの人に見て欲しい。

 

映画の前半、店を喫茶店代わりに毎日やって来る4人組のおじさんが出てくる。その内のひとり芦屋小雁さん演じるおじさんは上野樹里さんから「プラズマテレビを買う買うと言って買わない○さん」と紹介される。

 

この映画が制作されたのが2006年。

そうか、この頃はまだ松下電器プラズマテレビに傾注していたのか。

 

そのプラズマテレビの旗振り役だった中村邦夫松下電器社長が亡くなった。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6446278

 

あの頃の松下電器プラズマテレビへの注力ぶりは凄まじかった。社員向けの社内誌も毎月のようにプラズマが液晶に対して如何に優れているかのPRに埋め尽くされていたなあ。

 

前に書いた山下社長と違い、中村社長とはひとつのエピソードも、一面識もないが私の上司だった人がアメリカ松下会長時代の中村氏と車で乗り合わせたことがあり「顔は怖いし、一言も喋らないし、あんなに緊張したことはなかった。」と話していた。

 

こんな時山下社長なら緊張をほぐすためにひとことふたこと話してくれたに違いない。とは私の勝手な推測だが。

 

時効だから書くが2006年当時、いやもっと早くからプラズマテレビ液晶テレビに勝てるとは社内でも誰も信じていなかったと思う。これは何かの書籍で読んだ話だがある幹部が中村社長にうちも液晶にシフトするよう進言したところ「お前はプラズマを売ることだけを考えろ!」と一喝されたらしい。

 

この話の真偽は知らない。しかしもし本当とすれば「重くて遅い松下から軽くて速い松下へ」を唱え続けた中村社長自身が重石になっていたことになる。何とも皮肉な話だ。

 

次の大坪社長は私の新入社員製造実習時のライン責任者だった方で私が唯一話をしたことのある社長だ。この話はまたの機会に。