初恋・・・らしきもの

熱狂的な阪神ファンで知られた上岡龍太郎さんはある時阪神が負けたらやはり悔しいか聞かれこう答えた。

「全然悔しくなんかありません。例えば2対1で負けたとして、相手の取った2点は相手のファンが喜べばよろしい。私は阪神の取った1点を褒め称えるだけです。」

 

市立和歌山の取った1点を褒め称えよう。

 

 

同窓会を終え、そう言えば先日話したあいつは学生時代どんな面構えだったのだろうと卒業アルバムを取り出したまではいいのだが、誰の顔を見たかったのか忘れてしまっていた。やはり寄る年波には勝てない。

 

卒業アルバムは小中高大まとめて箱に入れているのでふと中学校のアルバムを手に取った。私がそろそろ女性と話すことがまともに出来なくなりつつあった頃だ。

 

とはいえ私も男、小学校の低学年時は別として、クラス替えがあるとどの子が可愛いかなあと物色、勝手に順位付けしていたのは今でもテレビで可愛い女優やタレントを見つけると嬉しいのと何ら変わるところはない。

 

勿論、可愛いなあ、と心で思うだけ、何のアクションを起こせる訳でもない。だからそれ以上のことは何も起こらない筈だった。

 

そんな中、中学2年の某日、事件は起こった。休憩時間に友人の机で談笑している時突然おならを催した。(それにしても尿意や便意という言葉はあるのにおならに該当する言葉が無いのは何故だろう。)

 

休憩時間でそれなりにガヤガヤしているし、少々ぶっ放しても大丈夫だろうとまあまあ豪快な放屁をした。勿論周りに誰もいないことを確認したつもりだった。処が何たること!偶々通り掛かったクラスの女の子にものの見事に聞かれてしまったではないか!慌ててその子を見ると向こうも真っ赤な顔をしてこちらを見ていた。

 

こうなるともう駄目だ。皆に言いふらされるのではないか、変な噂(噂ではなく事実だが)が広まったらどうしよう。勿論そんなことをするタイプの子とは思わなかったが、何週間かは気で気でなかった。

 

好きの反対は嫌いではなく無関心だという。それまでは良いなあ、可愛いいなあと思うことがあってもそこまでに留まっていた私が初めて異性を意識した瞬間だった。

 

彼女の名前は今でも覚えている。中3進級時に違うクラスになり、高校も違ったのでそれきりになっている。

 

あれから丁度50年、彼女はこの事件を覚えているだろうか。そんな筈はないと思うが覚えてくれている方が困るような嬉しいような。