街全体でおもてなし

 

ある黒人女性が来日し、高級寿司店を訪れた。すると先に居た白人の客がここはお前の来るところではないから出て行けと罵った。女性が出ようとすると店の主が呼び止め、白人の客に向かって「お代は要りませんから出て行ってください。」そして黒人女性に言う。「何を握りましょう?」

 

こんな感動的な話をYouTubeで見た。母国では差別されることが当たり前の日常なのでより一層嬉しかったのだろう。

 

下呂温泉に来ている。私は滅多にお土産を買わないが例外がある。紙パックの地酒だ。瓶の酒なら多くの土産物店に置いているが、重いし、高い。それにもし割れたら大変だ。

 

幸い温泉街に何軒かコンビニがあった。2軒目のコンビニに目ぼしいものがあったがひとつしか無い。友人の分とふたつ買いたかったので店員さんに聞いた。店にあるのは店頭に並んでいる分だけとのこと。もうひとつ見慣れない酒があったが裏を見ると長野県の酒蔵。別に構わないのだがやはり買う以上、訪問先の酒を買いたい。どうしようか迷っていると先程の店員さんが声を掛けてくれた。「ここから歩いて10分ほど掛りますが○ドラッグに行けばもっとたくさんお酒を置いていると思いますよ。」そして何とそこまでの道のりを道路マップに書いて渡してくれた。

 

店を出て妻が言う。「あの店員さんアホやな。黙ってれば1本は売れたかも知れへんのに。」

 

そうかも知れない。確かに短期的には損をしたと言えないこともない。でもこのコンビニで受けた親切がきっかけで下呂温泉岐阜県に好印象を持ち、また来たいと思わせることに繋がれば長期的には大きな得だと言えるのではないか。

 

そう言えば私はお店でこんな親切に出会ったことがあっただろうか。寿司店の主は白人客のお代を白紙にしてまで礼節を守り通した。同様にこのコンビニの店員さんも自店の売上が無くなることを覚悟してまで情報を教えてくれた。

 

よし、又下呂温泉に来よう。