近くに有りて

和歌山ラーメンなんて言葉は元々なかった。ラーメンと言えば家で作るインスタントラーメン。外で食べるのは中華そば。井出商店が全国一になって和歌山ラーメンなる造語ができるまで県民皆そう思っていた。その井出商店に勝るとも劣らない、歴史ある中華そば店が自宅の直ぐ近くにある。

 

今日昼過ぎ、その店の前を通りかかるとひとりのおじさんが出てきて駐車場で待っている仲間にこう言った。

「あかな、いっぱいよ。あっち行こら。」これで通じる人間は根っからの和歌山県人でラーメン好きだ。

 

大体通じると思うが「あっち行こら。」は車で10分程の支店に行こうという意味(で間違いない)。

 

この中華そば屋さん、歴史は古い。今、店をやっている方が何代目か知らないが私が小学生の頃、歩いて5分程の所で屋台で営業していた。どういう知り合いだったのか今となっては不明だが家には結構夜の来客が多く、よくこの屋台の中華そばを出前してもらっていた。

 

携帯のない時代、屋台で固定電話もない。私は直接屋台まで走って出前を頼みに行く係だった。その頃一杯の値段が¥80だった。

 

屋台から支店まで持つ店にまでなったのだからちよつとした「アメリカンドリーム」には違いない。だが郷愁(ノスタルジー)かも知れないが、あの頃の味のほうが旨かったように思う。