63歳になって思うこと

松下電器で毎年1月10日に開催されていた経営方針発表会の衛星中継に一度だけ参加したことがある。どんな話があったか殆ど覚えていいないがひとつだけ会長の話にこんな内容があったことをを印象深く覚えている。

 

「前から不思議だったのですがキツツキがあれだけ強く頭を木に打ち付けているのに何故脳震盪にならないのでしょうか。ムササビが空中を飛んできて木に勢いよくぶつかるのに何故怪我や骨折をしないのでしょうか。」

 

この時私は40代、(松下正治)会長は80歳を大きく越えていたと思うが、誠に失礼ながらこう思った。「会長、何を寝呆けたことを言ってるのですか!」

 

松下幸之助氏の「青春とは」という言葉。併せてサミュエル・ウルマンの「青春」という有名な言葉も紹介されている。

http://www2.obirin.ac.jp/annay/jhcd/lecture8/lect8.html

 

評論家の佐高信氏はこの言葉を「いつまでも経営トップにしがみ付く老人の格好の言い訳に使われている。」と酷評し、私もそんな風に考えていた時期があった。しかしあれから20年、私の考えは180度近く変わった。

 

「80歳を過ぎてこんな好奇心を持ち続けられることは本当に素晴らしい。」今私は素直に会長の言葉についてそう感じる。

 

幸い健康や体力面で老いや衰えを感じることはまだそれ程はない。しかし精神面はどうだ。何かについて興味が湧いたり、関心が深まったりすることは全くと言っていいほどなくなった。キツツキが脳震盪にならないのは何故か、ムササビが怪我しないのは何故か、そんな疑問を感じる感性が枯渇している。

 

欲しいもの、行きたい旅行先も特にない。思い浮かばない。少し前まで生でピラミッドを見たいと強く思っていたが準備や移動を考えると気が重い。庭に池を作って錦鯉を飼いたいがその後の管理を思うと気が進まない。

 

食べ物もそうだ。腹いっぱいこれを食べたい!というものが思い浮かばない。最後の晩餐をあれこれ考えた時期もあったが、今は普通にご飯と焼き魚でいい。子供の頃は一度でいいからソーセージ(当時は赤ウインナー)を好きなだけ食べれたら死んでもいいとまで思ったものだが・・・。

 

誰かが言っていた。年寄りのイメージは縁側で膝に猫を抱いている光景だと。いかん、縁側を除けば今の私にそっくりそのまやではないか!誕生日を期にこの一年は何としても心の若さを回復する年にしよう。

 

って、何から始めればいいのだろう?