叱ってくれる存在

「8時だよ全員集合」のリハーサルは苛烈を極めたものだったらしい。いかりや長介さんの怒声が響き、メンバー全員ピリピリ。物凄い緊張感が張り詰めていたという。そのいかりやさんが後年黒澤明監督の「夢」に出演した時のこと。流石のいかりやさんも世界の黒澤の前では攻守逆転、何回、何十回と駄目出しを受ける、叱られる。さぞやいかりやさんも落ち込んでいるかと思いきや、実際は全く逆、むしろ喜々としている。理由を聞くと久しぶりに叱られたことが新鮮で嬉しかったとのこと。そう、いかりやさんは弱冠30歳でドリフターズのリーダーになって以来、叱ることはあっても叱られることはなかった。

 

私の敬愛するジャイアント馬場さんにも同様のエピソードがある。馬場さんはレスラーと所属団体の会長も兼ねていた。プロ野球で選手と監督を兼ねるのは珍しくないが、馬場さんは更に球団社長も兼ねるようなもの。その馬場さんが巨人軍のOB戦に招かれた時、最初はあまり乗り気ではなかったが、行くと巨人時代の先輩がたくさん居る。当時の二軍監督だった千葉茂さんから「おい、馬場!」と呼ばれた時の嬉しそうな笑顔はそれまで誰も見たことのないものだったそうだ。

 

大橋巨泉さんは生前ビートたけしさんに常々こう言って諭した。

タモリはお前の10倍凄い。萩本欽一はお前の100倍凄い。それでも飽きられる時が来るのだからお前も慢心するなよ。」

その巨泉さんも8年前に亡くなり、残念ながらたけしさんは慢心の一途を辿っている。私の廻りにも今のたけしは何が面白いのかさっぱり分からないと言う人が少なくない。

 

ダウンタウン松本さんの件で上沼恵美子さんも言っていた。「偉くなりすぎて誰も注意する人がおらんかったやろうね。」どれだけ偉くなっても叱ってくれる人の存在は重要だ。

 

さて、今のスポーツ界で世界的に通用する選手といえば大谷翔平さんや井上尚弥さんの名前が挙がるだろうか巨泉さんの言葉を借りれば私見ではこうなる。

井上尚弥大谷翔平の10倍凄い。だが内村航平は100倍凄い。」

この理由は前に書いたので重複は避ける。

 

その内村航平さんと現世界王者、橋本大輝さんが対談している。何も言わずにとにかく読んで2人の思いを汲み取って欲しい。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240111/k10014316251000.html