実際に接するこ

姉婿は鶏肉が食べられない。子供の頃に鶏を〆るのを見たからだそうだ。私達が日常食べている肉は全て同じような経緯を経て食卓に上っていることは誰でも知っている。でも平気で食べられるのは目の前で実際にそれを見ていないからだ。それ程、実際に見たのと頭で分かっているだけとでは差がある。人間も同じ、私がどれだけチャップリン双葉山のことを書籍で読んで学んでも実際に会った人の万分の一にも及ばない。前にも書いたが私は入社した年、ほんの1メートルもない近距離で松下幸之助氏を見、生の声を聞いた。このことは私の生涯忘れられない思い出であるし、誇りである。

 

 

先日NHK糸川英夫氏が取り上げられた。

https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2024012234608

小惑星イトカワ」の命名元となった日本のロケット産みの親。

 

私は就職という人生の一大事で志望したのは全て製造業だった。製造業以外に目を向けなかった。大学4年の時に大阪で聞いた糸川英夫氏の講演がその理由だ。

 

主催がどこだったのか、誰と行ったのか記憶にない。しかし糸川氏が「仕事を単に金を稼ぐ手段と考えるのなら銀行や商社もいいでしょう、でも仕事にやり甲斐を感じたいのなら製造業に行きなさい。」ということを繰り返し仰っていたことは記憶に残った。糸川氏がどれだけ偉大な人物か知らず、製造業と金融業の違いもろくに分かっていなかった当時の私達は「あれ、絶対製造業の廻し者やで。」と言って笑い合った。

 

正直、私はそれ程就職について真剣に考えていなかった。公務員になると堕落すると信じ込んでいたので公務員以外なら何でも良かった。糸川英夫さんはよく知らないが講演の講師をするくらいだからまあ偉い人なのだろう、その人が製造業に行けというのだからそうしておこうか位の気持ちだった。だから糸川氏がもしあの時、商社に行けと言っていたら商社を志望していたかも知れない。もし商社に行っていたらどうなっていただろう。そんなことを想像するのも楽しい。

 

でもこれだけはハッキリ言える。よく知らない人の話でも実際に生で聞いたから私も説得されたのだ。もっと良く知っている人の話でも書籍やテレビで聞いた話ならそれほど心を動かされていない。