菅首相退陣

私が松下電器に入社した時の社長、山下俊彦氏は20数人居る取締役の末席2番目から大抜擢された。「松下のような歴史のある会社でこんな人事は世間が納得しない」と固辞したが徐々に外堀を埋められ結局受諾せざるを得なくなった。余程面白くなかったと見え、ずっとお酒を呑んでいた、とはご家族の弁。

 

その就任会見で山下社長は「選ばれた方にも責任があるが選んだ方にも責任がある」という有名な言葉を残した。余程の自信がなけれはなかなか言えるセリフではない。

 

そして社長として9年間、松下幸之助相談役からは最低10年やって欲しいとの希望だったがVHSビデオという松下にとって空前絶後の大ヒット商品が出たことを置き土産に後進に道を譲った。山下さんらしいスッキリした引き際は世間の好感を買った。

 

菅首相が次の総裁選に出馬しないことを表明した。事実上の退陣表明。

 

一年前、安倍首相の突然の辞任後の総裁選、多くの派閥から担がれて出馬したが本当に菅氏は総理大臣になりたかったのだろうか。既にコロナが猛威を振るっており、苦労することは目に見えていた。山下氏同様、辞退したが聞き入れられなかったのではあるまいか。

 

そして今回の辞任劇、当人は辞めたくて辞めるのだろうか、つい前日までは次も立候補すると話していたのに。

 

その地位に就くのも不本意、その地位を去るのも不本意。国家の最高権力者とは言え、なかなかに実情は厳しいものがあると感じざるを得ない。