もっと光を

「もっと光を」。ドイツの詩人、作家ゲーテ最期の言葉としてよく知られている。

 

この言葉の意味について今まで深く考えたことはなかったが、どうやら本当にもっと部屋を明るくして欲しいという事だったらしい。

 

年齢を重ねて色々身体の変化に気付かされることが多いが、そのひとつが明るさの必要度合いがまるで変わってしまった事だ。照明機器の説明で「20代8畳、40代6畳、60代4.5畳」のような文言を見た方は多いと思う。同じ明るさの照明でも20代なら8畳の部屋に使えるが、60代なら4.5畳の部屋にしか使えないという意味だが、我が身を振り返ると確かにその通りだ。

 

今のリビングルームの照明を買ったのは10年ほど前。初めてのLED照明と言う事もあり、眼に刺さるような明るさ、本や新聞の文字がくっきり見える事に驚いた覚えがある。フルの明るさ(全灯)では眩し過ぎて、7〜8割に調整して使っていた。

 

いつだっただろうか、ある日、本の文字が読みにくく感じた。眩しくて直視出来なかった照明がそれ程明るく感じない。妻に聞いた。

「この照明、最近暗くなってない?」

「いや、そんな事ないと思うけど。」

 

そうだ、全灯にしてみよう。長らく使っていなかったリモコンを取り出し全灯ボタンを押した。「えっ?明るさが変わらない。」自分でも覚えていないがかなり前から全灯で使っていたようだ。購入時、眩しくてセーブして使っていた明るさが今やフルにしても暗く感じてしまう。

 

せめてもの救いは妻も全灯にしていた事をすっかり忘れていたことだ。って夫婦で傷を舐め合ってどうする。

 

私はまだ当分死なない(つもり)だが声を大にして叫ぶ。「もっと光を!」