晩酌しながら

松下電器貿易という会社があった。言うまでもなく松下グループの一企業だが、1988年松下電器産業に合併されるまで採用も給与体系も全くの別会社だった。風の噂に聞いた話だが合併される時、かなりの数の、それも若手女子社員が退職したと言う。曰く

 

「私は心斎橋に本社のある商社に就職したのであって、門真に本社のある製造業に就職した覚えはありません。」

・・・バブル期ならではの名言か。

 

その松下電器貿易に知り合いが居た。その頃私は滋賀県に住んでいたが、彼は同じ和歌山県人、会社が心斎橋なので実家から通勤していた。その彼が結婚し、新居にお呼ばれする機会があった。

 

彼がお酒を飲まない(飲めない)ことは知っていた。奥さんも飲まないことも。どんな料理を出してくれたか申し訳ないが思い出せない。はっきりと覚えているのは缶ビールが出たのだが一見、

「これ、どんだけ昔のデザインよ〜!」思わず叫びたくなるような昔懐かしいものだったこと。

 

少しお酒の飲める方には共感してもらえると思うが缶ビール1本なんて我々にとっては名刺みたいなもの。あっという間もなく空っぽ。すると夫婦で目を合わせて何やら相談している。

 

奥さんが外出した。どうやら追加のビールを買いに行ってくれた模様。申し訳ない。1本しかないと分かっていればもう少しペース配分したのだが。・・・無理か。

 

何故こんな昔のことを思い出したかと言うと、今私は晩酌の真っ最中だ。誰も興味はないだろうが私の晩酌のメインはチューハイかハイボール。ビールは滅多に飲まない。その私が今ビールを飲んでいる。スーパードライ。缶を見ると東京オリンピックパラリンピックオフィシャルビールと書かれている。

製造日を見ると2020年12月。まだオリンピックをやるとも止めるとも決めていなかった時期だ。結果、オリンピックはやるにはやったが無観客になった。選手村はアルコールOKだったらしいがアサヒビールの目論見は大きく外れたことだろう。

 

そう言えば今日誰かがテレビで言っていた。「今年も残り少なくなってきましたが」。もうすぐこのビールも1歳か。

 

あっ、もう空っぽだ。