選択肢が増えすぎる弊害

母方の実家は代々続くみかん農家で私も子供の頃はお手伝い名目でよく遊びに行った。当時健在だった祖父が1日の仕事を終え、夕食時にコーヒーカップで熱燗を呑むことを習慣にしていたが、子供心にも何とも美味しそうに見えたことをよく覚えている。

 

その頃、飲んでいた酒は和歌山の地元メーカーの「世界一統」という銘柄。前にも書いたが当時は酒と言えばビールか日本酒。ウイスキーはスナックやバーの飲み物。焼酎など酒店でも飲食店でもまずお目にかかることはなかった。

 

ビールもキリンラガーがガリバー的ウエイトを占めていた。当時ビールは近くの酒店に電話で注文するのが当たり前だったが普通に「ビール持って来て」と注文すると銘柄も聞かずにキリンラガーを持って来るのが当たり前だった。

 

松田聖子さんが歌う懐かしのサントリーCM

https://youtu.be/jYT_YrQn9js

 

資料によると1983年の作品らしい。私がこの商品を初めて知ったのは休日に出掛けたスーパーマーケット。今では想像も出来ないが当時は飲酒運転にそれ程厳しい眼が向けられておらず普通にフードコートで売られていた。

 

「へー、こんな値段の安いビールもあるんや。」というのが最初の感想。ビールはどの店で買っても同じ値段が当たり前という時代だったので余計その疑問は大きかった。そう思うのも当然、当時の私は発泡酒というジャンルそのものを知らなかった。

 

あれから40年近い年月が経ちお酒の種類も格段に増えた。ジャンルだけでも日本酒とビールだけから焼酎、チューハイ、ハイボール、ワイン、リキュール、ジン・スピリッツ等。

 

私が今飲む酒のメインはチューハイだがそのチューハイだけでも一体何十種類あるのだろう。私は基本ケース買いするので一度買うとしばらくその銘柄を飲み続けることになるが、買う時は今まで飲んだことのない物を買いたい。そうすると先ず間違いなく下記のような経緯を辿る事になる。

 

①箱を開けて最初の1本。

「まずい。前のにしておけば良かった。」

②徐々にその味に慣れてくる。

③その味が美味しく思えてくる。

④また違う銘柄のチューハイを買う。

以下、①〜④の繰り返し。

 

チューハイほど種類は多くないが他の酒でも充分同じ事が起こり得るだろう。

 

果たして選択肢の増え過ぎた現在は本当に良い時代と言えるのだろうか。