昔読んだマンガの影響

ごく短期間であったが母親が証券会社に勤めていた時期があった。パートだったのか正社員だったのか、どんな仕事をしていたのか一切記憶にない。覚えているのは当時の支店長が大の「巨人の星」のファンでコミック全巻を貸してくれたことだ。

 

私は申すまでもなく野球よりプロレス好き、まして巨人なんて中央、権力の象徴のようなものだから今だったら全く読まずにある程度経ってから返していただろう。でも当時は他に娯楽と言ってもそれ程なく、余り気乗りせずに読み始め、知らない間に夢中になっていたと言うのが本当のところ。

 

BSに昔のマンガを振り返る番組があり、先日の放送で「巨人の星」を取り上げていた。私が読んだのは50年以上前だが主役の星飛雄馬、バッテリーを組む伴大吾、ライバルの花形進、左門豊作の名前、更に伴と花形は金持ちだが星と左門は貧しい家だったということは覚えている。

 

ただでなくても貧しいのに父、一徹は飛雄馬に名門校(おそらく野球の強豪校)への進学を勧める。その為土方仕事を掛け持ちし、遂に過労で倒れてしまう。涙なしでは見られないシーンだ。

 

左門の家はもっと悲惨だ。幼い頃に両親を亡くし弟、妹4.5人と親戚の家で世話になっている。ろくな食事も与えられずこき使われる毎日。高校に行きたいなんてとても言える状況ではない。しかしいよいよ受験の締め切りが迫ったある日、弟妹がその家の主に涙ながらに訴える。

「私達はどんなことでもしますからお兄ちゃんを高校に行かせて下さい!」

お涙ちょうだいここに極まれり。

 

今の目線で見れはツッコミどころ満載かも知れない。左門兄弟はそんな酷い目に遭うのなら何故養護施設に行かなかったのか、とかMCのカズレーザーさんも言っていたように「一徹は元プロ野球選手なのに何故あんなに金が無いのか」とか。

 

でもこの本を読んだ当時はこれらの事が全く不自然には思わなかった。むしろ水が砂に沁みるように自然に身体に染み込んだ。

 

これらの事が知らぬ間に自分の思想やものの考え方に影響を及ぼしていたのだろう。前にも書いたが子供に「行きたくなかったら高校に行かなくてもよいぞ。」とか「塾なんて贅沢だから効果がないのなら辞めろ。」などと言ったのも子供の時に読んだこれらの漫画の影響が大きいのかも知れない。