逸失利益

また出た統計の落とし穴を悪用した某保険会社CM。どこの会社とは言わないが。

「65歳以上の3人に1人は認知症

まともな会社がこんな事を言っていいのか。私は今62歳。という事は3年後には33%の確率で認知症になっているのか。普通に考えればそう勘違いしてしまわないか?

 

よく聞く「2人に1人はガンになる」同様、善良な小市民を怖がらせるような広告は止めて欲しい。そんな事を言っている一方で「人生100年時代に向けた備えを」。

 

もう訳が分からない。我々は長生きするの?早く死ぬの?そもそも100歳まで生きる人ってどれ位いるの?

 

 

交通事故で失われた命の値段に格差はあるのか。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4618/index.html

最初に断っておきたいのは、この判断を下したのは加害者が入っている保険会社であって、彼らの仕事は少しでも支払額を抑えること。従って彼らは職務を忠実にこなしているに過ぎないということだ。けして彼らが非情とか人間味がないということではない。

 

前にも書いたが私が事故に巻き込まれた時も最初に保険会社から示された過失割合は7対3だった(最終9対1で決着)。

 

さて首題の件であるが逸失利益という考えがある以上仕方ないのではないか、と言うのが私の考え。

 

松本清張氏は戦後ナンバーワンのベストセラー作家だがデビューしたのは40歳を廻ってからでそれまではいくつものアルバイトを転々とする貧しい暮らしだった。清張氏は書いている(記憶なので若干の間違いがあるかも知れない)。

「今私が事故の被害に遭えば普通のサラリーマンの何倍もの莫大な賠償金が入るだろうが作家になる何年か前に事故に遭っていたら雀の涙ほどの賠償金もなかっただろう。」

 

かなり以前中国の鉄道事故に修学旅行中の日本の学生が巻き込まれ多数の死傷者が出た。最終的にどんな決着になったのか知らないが当時のワイドショーを見ていた記憶では日本人死亡者への弔慰金として最初に提示された金額が20万円前後だったように記憶する。そんな馬鹿な、とその時私も思ったが中国人の犠牲者への弔慰金は数千円だったと聞き、何とも言えない気分になったものだ。

 

今回は身体障害者逸失利益が健常者のそれに比べて少なく評価されたのが悔しい、というその気持ちは分かる。でも先程の松本清張氏ではないが一般人の間でもその収入によって賠償金が大きく変わるのも事実。大会社のトップとホームレスで人間としての価値に何の違いもないと言っても始まらない。

 

思い出すのは1985年の日航ジャンボ機墜落事故。あの時マスコミはこぞって誰の賠償金が一番多いか推定額まで書いていた。確かハウス食品の社長で云億円ではなかったか。

 

当時のマスコミも随分無遠慮だが読者側からもそれ程の反発もなかったのではないか。

 

勿論、当時の方が良かったとは言わないけれど。