放送中、取り乱すことの許されないアナウンサー、ましてNHKのアナウンサーだった有働由美子さんがシドニーオリンピック柔道、篠原選手の誤審問題を伝える音声。
明らかに泣いている。
NHKのキャスターが本番中、取り乱したのはこれが初めてではない。それを遥かに遡る50年前、美人で知的でクール。「息子の嫁に欲しい女性ナンバーワン」と言われた宮崎緑さんがニュースの本番中、大泣きした。私はそのニュースを生で見ていたがその泣き方は有働さんの比ではなかった。次の原稿が読めなくなり他のアナウンサーに代わってもらったように記憶している。
宮崎さんをそこまで大泣きさせたニュース、それは中国残留日本人孤児の人たちが「日本のお父さん、お母さん会いたいです。」と涙ながらに切々と訴えるビデオであった。
中国残留孤児とは
https://www.kikokusha-center.or.jp/kikokusha/kiko_jijo/kiko_jijo.htm
当時の日本と中国の経済格差はどれくらいあっただろう。日本は既に高度成長期に入り衣食住、現在と大きく変わらないレベルに達していた。一方の中国は・・・。
添付写真の下を見てほしい。私が1985年に中国旅行したとき、昼食に立ち寄った食堂でたまたま開かれていた結婚記念パーティーの模様だ。可愛らしくお化粧をした花嫁さん、誇らしげな花婿さん。横にいるのはカップル何れかのお母さんか。この写真の更に10年以上前なのだから大体の想像は付くと思う。
NHKのニュースに出てきた残留孤児たちも粗末な服に身を包み、顔には年齢がとても信じられない程の深い皺が刻まれていた。長い苦労を想像させるに充分なものがあった。
日中国交正常化から今日で50年。今やかの国との立場は完全に逆転した。観光で大量にお土産を買ってくれている分には良かったが、報道によると一部富裕層は日本の不動産を買い漁っているというから今のうちに何らかの対策を打たねば大変なことになるだろう。
だが、ここで中国の批判めいたことを書くのは私の趣意ではない。今を去ること30年前、日本もアメリカのビルや映画会社、有名画家の絵画を買い漁った。ゴッホの絵画を云十億円で競り落とした某社の会長は「自分が死んだら棺桶にゴッホの絵を入れて一緒に焼いてほしい」と言って世界中から顰蹙を買った。
残留孤児の皆さんが想像も付かないような苦労をしてきたことは間違いないが、それもこれも中国自体が貧しかったから。中国の育ての親がよくしてくれたことは多くの孤児が証言している。中には日本人であることがばれていじめられた例もあるだろうが、子供を置いてまで帰国せざるを得なくなるような状況を作り出した日本の側こそ先に責められなければ本末転倒だ。
添付写真の上を見てほしい。観光バスに乗ったところを近くまで寄って来てくれた父子の写真だ。多分間違いなく私の生涯ベストフォト。こんな無垢で屈託のない笑顔の子供を最近見たことがあるだろうか。優しく見守る父親の表情も最高に微笑ましい。
コンビニ店長の本の稿でも触れたがここ何十年かで日本人は明らかにおかしくなっている。勿論悪い方にだ。
日本のように数十年掛けてゆっくり経済発展してきた国でも人心の荒廃が起きている。ましてや他の国の何十年分の発展を数年で駆け抜けてしまえばもっと異常なことが心に芽生えるのも無理もないことだ。
今、日本のマスコミの論調は右も左も中国脅威論で埋め尽くされている。欧米はそれでいいかも知れない。でも日本は同じアジアの国だ。もっと違う行き方、考え方もあって然るべきだと私は思う。
欧米は同じ価値観、同じ民主主義を強調するが彼らの目には日本も中国も所詮はイエローモンキー、もし本当にいざという事態が起こった時、必ず日本の味方をしてくれるという保証はどこにもない。
最低限そのことは理解しておく必要がある。