最近のものは・・・

私がクラシック音楽を聞き始めた頃、レコード1枚のレギュラー価格は2500円前後。今でもそう簡単に手の出る金額ではない。必然、買うレコードの殆ど全てが1200~1500円の廉価盤に集中した。でも何が幸いするか分からない。廉価盤=古い録音のものが多かったことが今も続く私のクラシック熱の原点になっている。何故なら本当に魂を揺さぶれられるような凄い演奏、指揮をする人は当時既にこの世になく、私は否応なしにこういった人の演奏を聞くチャンスに恵まれたからだ。もし、私の小遣いが潤沢にあり、好き好んで古い録音のレコードを聞くようなことがなければクラシック音楽などムード音楽と大して変わらないと勘違いしたまま、とうの昔に聞くのを止めていたに違いない。

 

大河ドラマ「どうする家康」の視聴率が低迷し、それこそドーする家康?だ、とスポーツ新聞の見出しにあった。うまいことを言う。

 

私は松本潤なる者に何の興味も関心もないし、何もこのドラマに限らないが演技力より人気優先でキャストを決めている時点で視聴者をバカにしていると感じざるを得ない。そりゃテレビ局からすれば視聴率が何より大切、その為にはたとえ演技に少々難があっても人気優先で配役を考えなければならないという事情は分かる。でもその為に役者が本業の俳優が脇に追いやられ、そればかりか主役より目立ってはならないという自縄自縛に陥いりながら演じざるを得ない今の状況は本末転倒そのものと言うしかない。

 

前にも書いたが、BSで放送されている往年のドラマや映画を見ると出演者皆本当に演技達者だ。俳優だけではない、あの頃の歌手も本当に歌の上手い人が本気で歌っていた。勿論、ごく少数下手な俳優、歌手も居たがそれは自身もファンも充分承知していたので出たとしても所謂「賑やかし」。今のように下手な者がそのままドラマや歌番組の主役に居座るようなことはけしてなかった。

 

テレビの低迷をネットや配信など情報の多様化に求める向きも多いが制作側も数字だけを求めるような安易な番組作りに走ってしまった責任も大きいのではないか。私は運良く往年の大指揮者の演奏による魂の洗礼を受けることが出来たので今でもクラシック音楽は私の何よりの趣味であり、生きがいになっているが、今真に人の心を揺り動かすような本物の演技、歌に触れられる機会を生んでくれるような番組はあるか。

 

余計なお世話だがSNSにうつつを抜かし、本当に凄い何ものかを経験しないまま大人になった人たちは将来何を趣味にし、生きがいにするのだろう。70歳になっても80歳になってもスマホの画面をせわしなくクリックしているのだろうか。

 

20XX年、電車に乗ったら子供から老人まで皆スマホの画面に首ったけ。そんな景色は見たくない。

 

この項、続く。