禍福は糾える縄の如し

最近あまり気を引く内容のなかった読売新聞の人生相談だが、今日の掲載分は久しぶりに身をつまされる切実なものだった。

https://www.yomiuri.co.jp/jinsei/20230629-OYT8T50070

 

ここ最近面白くなかったのは学生からの進路や勉学、学園生活に関する相談が多かったからで、もう還暦を廻った(世の中の酸いも甘いも噛み分けたとまでは言わないが)我々からすればそれらは全部「甘い!」の一言だ。いや、学生には学生の悩みがあるんだ。それは分かる。でも例えば学生時代のいじめなら同じクラス内、校内での発生が殆どだろう。それならその1年間、あるいは3年間だけ耐えればいいし、何なら転校という手段もある。最近は日本でも転職のハードルが低くなっていると聞くが少なくとも私の周りを見る限り、まして地方の元々勤め先の数が限られているような地域ではまだまだ一般的にはなっていない。つまり会社内でいじめに合えばどちらかが転勤するか、会社を辞めるまではそれが続きことになる。ひとり者なら辞めて自分の食いぶち分だけ稼げばそれでも良いが、家庭を持っているとそうも行かない。

 

それに学生の場合、いじめる側、いじめられる側どちらも同じ学生だ。実質的にはともかく、表向きは同等の権力を持った者同士だ。これが会社ならどうか。部下が上司をいじめることは考えられないのでいじめる側は体制的にも実質的にも権力を持った上司(組織)側ということになる。転勤や配置を決めるのも上司の権限だからずっとイジメてやろうと思えばそれも可能だ。

 

イジメだけではない。テストもそうだ。例えば学生A君はW大学、会社員B君は係長を目指すとしよう。A君がW大学に入るために必要なことは唯一つ、勉強に励んで成績を上げることだけ。そして本番の試験で合格点を上回れば晴れてW大学の学生。以上。

 

これが会社員のB君ならどうだろう。本人がいくら係長になりたいと切望しても上司から昇任試験を受けるメンバーに選ばれなければ試験を受けることすら出来ない。なんであいつが選ばれて俺は、と思っても抗議することは出来ない。いや抗議しても良いがそれは来年も選ばれる確率が下がるというリスクをはらんでいることを覚悟しておかなければならない。幸い試験を受けることは出来た。手応えも充分だった。でも結果は、なんてことも充分起こり得る。いや、審査が公正明大なら諦めもつく。でもその結果を見ると何であいつが、あの昇任試験のメンバーに選ばれたこと自体が不思議だったあいつが合格してるの!なんてことも同様に起こる。

 

会社のイジメに関してやけに詳しいなって?気のせいでしょ。いや、正直な話、私も相当に不合理、不公平な処遇にあった。中にはどう考えても私に落ち度がないものもあった。でも今になって思うのは私も随分と問題のある口の聞き方や主張をしていたことだ。どんな立派な人間でも所詮は感情の生き物、一度「この野郎!」と思われたら挽回するのは容易ではな

 

と、言う訳でサラリーマンとしては不遇の一言に終わってしまった私の半生だが、幸い家族には恵まれた。早期退職したのに一言の不満を言わなかった妻、明るく育ってくれた子供。冒頭の人生相談に挙げたような問題で親を悩ますこともなく、そればかりか可愛い孫をこの手に抱かせてくれた。社会人2年目の息子も既に意中の人がいるようで、今私達夫婦はむしろ慌てて決めるなよとストップを掛けている状況だ。

 

もし、この相談者に聞かれたらどれだけ羨ましがられることか。