八代亜紀さん

音楽を聞いて背中に電気が走るような経験は滅多にすることではない。私の場合最初にその経験をしたのはサイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」を聞いた時であり、次いで八代亜紀さんの「なみだ恋」が挙げられる。明日に架ける橋では何度もリフレインされる「like a bridge over troubled water」の末尾、正に曲の締めくくりのガーファンクルの歌唱に、そしてなみだ恋では一番の「逢えばせつない別れがつらい」の八代亜紀さんの歌唱に「電気が走った」。

https://youtube.com/watch?v=eS9K27N2nYE&si=kX-cuQ0V2HnvVzXP

 

今はクラシック音楽含めてこのような経験をすることはめっきり減ってしまった。やはり歌い手、演奏家としての鍛錬が違うのだろう。当時は歌番組全盛の時代で、いくつもの素人参加番組もあったが中でも八代さんが卒業した「全日本歌謡選手権」の厳しさは群を抜いていた。私はまだ小学生か中学生だったと思うがある回の出場者と審査員のこんなやり取りを覚えている。

 

審査員「それで貴方はどんな目的で今日出て来たの?」

出場者「はい、自分の実力がどんなものか試したくて。」

審査員「あー、良かった。プロになりたいなんて言われたらどうしようと思った。」

 

勿論、この人とてそこら辺のアイドル歌手なんかより遥かに歌が上手い。私だったらこんなキツイこと言われたら泣いてしまうかも知れない。

 

美空ひばりさんと初めて共演した時、ひばりさんが「今日は歌の上手い子がいるから私も負けないように頑張らないとね。」と言ってくれたことを子供のように喜んでいた八代亜紀さん、歌が上手いのが歌手だという当たり前のことを教えてくれた八代亜紀さん、御冥福をお祈りします。