死しても続く不公平

選抜大会、和歌山からは久し振りに2校出場したが早くも大会3日目にして全滅した。大学の難易度もそうだが野球の強さもその地方の繁栄度合いが如実に現れる。今だから正直に書くが私はもし関西大学に落ちたら滑り止めに中央大学を受けるつもりだった。当時は中央大学の方が明らかにランク下だった。なのに今調べるといつの間にか逆転している。北陸新幹線延伸で更に盛り上がる石川や人口が和歌山の7倍以上もある千葉の学校に敵う筈がない。

 

 

「事実は小説より奇なり」というが貿易研修センターでご一緒したSさんから聞いた労働災害ほど悲惨で気の毒な話も他にない。因みにSさんは貿易研修センターの同窓会東日本代表幹事、私は西日本代表幹事だ。

 

Sさんは製鉄会社勤務だったが、製鉄現場の溶鉱炉は冬でもほんのり温かい。それで休憩時間にその炉の中で昼寝していた人が居たのだが休憩時間明け、そうとは知らずに溶けた鉄を注入してしまった!・・・

 

何千℃もある鉄が何トンも降り注いだのだからたまったものではない。Sさんいわく、「影も形も残っていない。」身体も着衣も一瞬にして蒸発してしまうらしい。

 

テレビや新聞で死亡事故のニュースを聞かない日はない。交通事故、火事、色々あるが私が個人的に一番心が痛むのは勤務中の事故で亡くなった人だ。火災なら火事を起こした家の人より現場に突入して命を落とした消防員、クレーン車が突然倒れてきて巻き込まれて亡くなった交通誘導員などにより一層の哀れみと同情を覚える。

 

電通勤務の娘を過労自殺で亡くして。

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024031934211

この事件は当時大きく取り上げられた。確かにお気の毒だ。でも何か引っ掛かる。素直に憐憫の情が湧かない。東大卒の才媛、しかも美人。親からすればさぞや自慢の子供だったのだろう。でもあまりに揃い過ぎてはいないだろうか。私がひねくれているのかも知れないがこの子は将来を約束された子で他人の何倍も幸せになれる権利があったのに奪われてしまった。だから同じ命でも他人より重いのだと言っているように感じられてならない。

 

松本清張氏は40歳過ぎの作家デビューまで貧しい工員だった。後に長者番付常連となったある日回想してこう言っている。「自分など尋常小学校しか出ていない貧しい工員だったからもしその時に事故で命を落としていても最低限度の補償金も出なかっただろう。」

 

東大卒のエリートも突然の事故に巻き込まれて亡くなった交通誘導員も同じ命だ。しかも自殺は思い留まることも出来た筈だ。ある救急病院の医師は同じ程度危険に晒されている患者が同時に運ばれて来たらどう優先順位を付けるか聞かれはっきり言った。「第一優先は労災事故、自殺を図った者は一番後回し。」

 

なのに世間は、マスコミは、死してもまだ強者の味方をする。火災現場に飛び込んで命を落とした、或いは交通誘導員の事故遺族を取り上げた番組を作ったことがあるか。

 

あまりに不公平ではないか。