プロレス今昔

BS朝日で毎週放送されているプロレスを楽しみに見ている。キャッチフレーズは「金曜8時に34年ぶりにプロレスが帰ってきた」というものだ。

 

34年ぶりとは言うまでもない、ジャイアント馬場さん率いる日本プロレス(後、全日本プロレス)がこの時間に放送されていたことを指す。BSなどない時代、しかも読売ジャイアンツというドル箱を持っていながら、このゴールデンタイムにプロレスを放送していた事に当時のプロレス人気がどれほど高かったか分かってもらえると思う。

 

10代後半の頃から私の尊敬する人物は「チャップリン双葉山ジャイアント馬場」の3人で通してきた。就職面接で聞かれた時、面談の書類に書いた時も変わっていない。余談になるが長男が産まれた時、私は迷うことなく馬場さんの本名、「正平」を頂戴した(訳あって漢字は変わったが)。

 

今のプロレスと当時のプロレス、何が一番違うか。全く別の種目だが、体操を連想してもらうのが一番分かりやすいと思う。例えば「月面宙返り」。言うまでもなく、塚原光男選手が編み出した鉄棒競技の大技である。1972年のミュンヘンオリンピックで初公開した時の映像が今でもYou Tubeで見る事ができる。得点は当時の実質最高点の9.90。それでも観客からは驚嘆の声と得点が辛いぞ、というブーイングが溢れたという。

 

閑話休題。体操で10点満点と言えば誰しもルーマニアのコマネチ選手を思い浮かべると思うが、当時体操の審判はソ連に大甘で、そのソ連選手に9.9を出した後、誰が見てもそれを上回る演技をコマネチ選手がしたので10点を付けざるを得なかったという裏事情があったことは案外知られていない。)

 

ところが今はどうだろう。月面宙返りは鉄棒だけでなく、吊り輪、床など他の種目にも取り入れ、伸身の月面等難易度もぐっと上がっている。

 

プロレスも同じだ。私が初めてバックドロップを見たのはいつだったか。国際プロレスで名前は忘れたが黒人レスラーが日本選手に掛けたものだ。掛けられた選手は完全ノックアウト。担架で運ばれる事態とあいなり、背中に戦慄が走った。今はどうだろう。つい、この前見た日本選手同士の試合では双方バックドロップを連続で10発ほど掛け合ったのではないか。勿論、それで試合は決まっていない。

 

プロレスと体操を同列に論じるなという向きもあろうが、一観衆として見ている感想は全く同じだ。やっていることだけを見れば圧倒的に今の方が凄い。なのに、体操にせよプロレスにせよあの頃のハラハラ感、ドキドキ感がないのは何故たろう。

 

そう言えばブルース・リージャッキー・チェンも同じような関係に思える。