見るだけで涙

歩く人間山脈、一人民族大移動、古舘伊知郎さんのニックネームでも知られる巨人プロレスラー、アンドレ・ザ・ジャイアント氏は生前こう言っていたという。「俺は日本は大好きだが、街で俺を見かけると皆、遠くからこちらを見ながらヒソヒソ話をする。その感じが堪らなく嫌だ。これがアメリカなら平気で肩を叩きながらお前でっかいなあと言われる。無遠慮だがその方が余程気楽でいい。」並外れた身体の持ち主は我々の想像する以上にナーバスな神経の持ち主なのだろう。

 

 

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ここに一枚の写真がある。電車に乗っているのは私の尊敬してやまないジャイアント馬場さん。吊り革を持って立っている。頭が天井に届きそうだ。その馬場さんの向かいに打って変わって小柄な老婦人が座っている。

 

写真の解説を読むと、老婦人は馬場さんの母親。東京見物に故郷の新潟から出て来た。アンドレと同じく、目立つことの嫌いな馬場さんは本当は自家用車(確かキャデラック)で廻りたかったのだが、母親が車では乗り物酔いするので電車での東京案内となったとのこと。

 

孝行息子のほのぼの写真と捉える方もいるかも知れない。でも私は見ているだけで涙が溢れる。どれだけ電車に乗るのが嫌だっただろう。

 

その馬場さんが亡くなったのが1999年1月31日。61歳、今の私と同い年だ。