生涯唯一の経験

何かと男女差別の問題が取沙汰される日本で数少ない男性の被害が見逃されがちなのが「性暴力」だろう。

https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic013.html?cid=nwebhk-tvqc

 

私も一度だけだが同性愛者らしき人から悪戯されそうになつたことがある。大学生の時。

 

場所は大阪の某名画座。往年の名作を2、3本立てで格安の料金(300円前後)で見られるのでよく通った。

 

昔の映画館は今のように入れ替え方式ではなくチケットを買ったらすぐ入れ、出る出ないは全くの自由。気に入ったら2回続けて見るもよし、私は一度ホテル代わりに使ったこともある。

 

制限なしで入れるということは館内の混み具合も入るまで分からない。人気のある映画だと満席どころか壁際にずらっと立って見ることになる。その時もそうだった。

 

映画が何だったのか忘れた。スクリーンを見ているとズボン越しにお尻を触られている。隣を見るとスーツを着たサラリーマン風。年齢は30代位。中年ではなかった。

 

触られていることは間違いない。ただ偶然下ろした手が当たっているだけかも知れない。それで私は数十センチ横に移動した。するとそのサラリーマン、一緒に移動してくるではないか!不思議と恐怖感がなかったのは沢山の人が居る空間だということと、20歳前後だったので万一の事態になっても対処出来ると思っていたのだろう。先日も友人と話したが今だったらキックやパンチの前に肘やひざが痛くて使い物にならない。

 

その後触ってくることはなかったが見ていた映画が終わり客の入れ替えが始まるとそのサラリーマン「席が空いたので座りに行きませんか?」と声を掛けてきた。明るくなった館内で見ると男の私が言うのも何だが爽やかなイケメン。さぞや女性にもてそう。

 

「いや、結構です。」言葉で言ったか、ジェスチャーだったか。私の生涯唯一の薔薇族体験はかくして終わりを告げた。

 

その後私は何を思ったか。上記の番組では被害にあった男性は結構心の傷になったようだが私の場合全くそんなことはなく、というよりむしろ少し嬉しかったというのが正直なところだ。勿論、その道に誘われた事ではなく、単に声を掛けられたということが。何しろそんな経験したことがないもので。

 

あのサラリーマン氏、その後どんな人生を送ったのだろう。