スマホを拾っただけなのに

早くも先月末くらいからおせちの広告を見るようになった。店によっては来年のカレンダーも売られている。今頃からカレンダーって誰がどんな目的で買うのだろう。

 

とは言いながらカレンダーにせよ、運勢の本にせよ新しい年の品物を見かけるとなんだか嬉しくなる。多分だが、今年も何とか健康で乗り切れた、という安堵の気持ちのようなものが湧いてくるのだと思う。以前にはなかった感情で、これも寄る年波か。

 

 

それにしても不思議なことが起こるものだ。今日は朝から自転車で4箇所廻った。図書館、スーパー、ホームセンター、レンタルビデオ店。気付いたのはホームセンターを出た後。ラインの着信音が鳴ったので自転車を止めて胸ポケットのスマホを取り出すと、あれ、2台ある!びっくりなんてものではない。全く覚えがない。いつ?なぜ?どのように?

 

先ず思い付いたのがドラマでよく見る捕まりそうになった泥棒が他人のカバンに盗品を投げ入れて逃げるシーン。何かの犯罪に巻き込まれたか?でも人のポケットに気付かずに入れるのは無理がある。

 

とすれば残るはひとつ。ホームセンターでトイレ(大)に行った時、出際に棚かペーパーの上にあった人のスマホを「あっ、忘れるところだった」と慌ててポケットにしまった。それなら考えられないこともない。まあ、惚けてることには違いはないが。

 

一瞬どこかに置いて帰ってしまえという悪魔の囁きが脳裏によぎったが、そんなことは出来る訳がない。かと言って警察と関わるのはなるべく避けたい。

 

なにはともあれ、帰宅し今行った4箇所に電話した。共通して聞かれたのは「当店に携帯をお忘れになったのですか?」無理もない。「いや、私が拾ったのです。」4店とも届けは出ていない模様。

 

こうなれば警察に届けるしかない。最寄りの交番へ。私の説明が心許ないのだから仕方ないが不審顔をされた。幸い疑われてはいない。当たり前だ、私が盗んだのなら自ら進んで届ける訳がない。一応住所、氏名、連絡先と遺失物に対する一切の権利を放棄すること、落とし主が見つかっても連絡不要の書類に記入し手続き終了。

 

これで万事終了と思っていたら甘かった。帰宅して程なく携帯が鳴った。表示された番号はたったさっき掛けたばかりの交番。

 

「キャリー」という恐怖映画があった。クラスメートから酷いいじめにあっていた少女が死んでしまう。ここまでは全く怖くない。金返せと言いたくなるレベル。ラストシーンで唯一いじめに加わっていなかった女の子が墓前で手を合わせていると突然土中から手が出て来て女の子の手を掴んで離さない。

 

「キャーッ」映画館に悲鳴が響いた。それも何人も、男も女も。ネタバレしてしまったがこのラストシーンは今でも忘れない。

 

長々と関係のない話を書いたが、この電話番号を見た時のドキッという恐怖はキャリーのそれに匹敵した。

 

「さっきホームセンター○店の2階でトイレに行ったと言ったやろ。調べたら○店の2階にはトイレないんやけどなあ。」

「○店って言いました?間違いです。私が行ったのは✕店です。」

「ああ、あそこなら2階にトイレあるな。」

 

幸い疑いは晴れたものの(と思う)、やはりおかしいと思ったら警察は喋った内容の裏付けを取るのだと妙に関心した次第。

 

スマホを拾っただけなのに。