国葬私見

先週(先々週?)の探偵ナイトスクープ「娘がマスクを外さない」は衝撃的だった。マスクを外すのは自宅以外では給食で食べ物を口に入れる一瞬、それもマスクは付けたまま必要最小限の大きさだけ顎から上げ、口に入ればすぐマスクを元通りに戻す。通学中も体育の授業中ももちろん付けたまま。

 

更に驚いたのは同性の女友達同士でも小学校からの素顔を知っている友達の前ではマスクを外すが、中学校からのマスクを付けた顔しか知らない友達の前ではけしてマスクは外すことはなく、それは他の友人も皆同じだということ。番組ではあまりその部分に触れなかったが私は背筋が凍る思いがした。こんな子供は全国中けして珍しくないと思う。この子らの交際範囲は高校、大学、就職とこれから益々大きくなるが、このまま放置すればどうなるのだろうか。精神面での影響も小さくないだろう。政治家や医者にこそ是非見て欲しい内容だった。

 

安倍元首相の国葬について、発表直後は賛成意見が多数だったが今や完全に逆転していることは周知の通り。直後の賛成が多かったのは勿論統一教会問題がここまでの大問題になることを誰も予測していなかったこと、日本では滅多に起こらない暗殺事件で皆混乱していたことも挙げられるが、安倍氏自身が本当に国葬に値するほどの宰相だったのか冷静に考え始めたことも大きいのではないか。

 

岸田首相は国葬を決めた4つの理由を公表しており、ここには繰り返さないが誰にもすんなり納得出来るのは長い間政権に就いていたことだけではなかろうか。ではその長い間に何をした?安倍氏を擁護する側からは集団的自衛権云々などと難しい理屈をひねくり出すが、全力を挙げて取り組むと力説していた拉致問題はどうなった?、プーチン大統領と何回会ったか知らないが、北方領土は却って遠ざかったのでは?、小泉首相官房長官時にはどこの国から何と言われようと靖国神社に参拝すると勇ましいことを言っていたのにこれもさっぱり。好意的に考えようと頭を捻っているのだが何ひとつこれが功績だ!というものが浮かばない。

 

上に国葬に値する、と書いたが戦後唯一の吉田茂元首相の国葬が50年以上前。当時のことを知らない多数派の人が国葬の意義、歴史について考え始めたことも大きいのではないか。エリザベス女王国葬、これは当たり前のこと。しかしニュースを聞くとイギリスでの国葬チャーチル首相以来だという。あのサッチャー氏ですら国葬ではなかったのだ。

 

吉田元首相は日本で言えばチャーチルのような存在。勿論反対意見もあっただろうが功績面で文句の付けようがないことは皆認めざるを得なかった筈。吉田元首相を持ち出すまでもなく、中曽根元首相や田中角栄元首相の方が少なくとも形に残るような功績があったのではないか。

 

外交で顕著な功績を挙げた?多くの国から弔慰が寄せられている?それは何でも言うことを聞いてくれる与しやすい相手と見られていたからではないのか。商売に置き換えれば簡単だ。何でも言い値で買ってくれる相手ととにかく値切り交渉の厳しい相手、どちらが向こうの立場に立つと歓迎される?考えるまでもない。死んだら敵も味方もない、なんておめでたい考えをしているのは日本人だけだ。日本は「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」の国だが「落ちた犬は棒で叩け」という国がついお隣にいる。

 

それでも国葬は行われるだろう。こうなったらいっそのこと当日を国民の休日にしませんか?少なくとも学生とサラリーマンからは喜ばれることを保証する。